実践!事業承継・自社株対策
会社に自己株式を譲渡する場合の価格【実践!事業承継・自社株対策】第159号
2023.07.27
Q 私は創業者でありますが、会社も順調に成長してきたため、株式の相続税評価額もそれなりに高くなってきております。
そこで、一部会社に自己株式として株式を買い取ってもらい、その後、従業員や後継者に機を見て譲渡したり、場合によっては消却することも考えています。
自己株式の買取りは資本取引なので課税は生じないとも聞きますが、売却する価格は低い価格でも良いのでしょうか?
A ご質問の資本取引の概念は、法人税法上のものであり、会社の損益を認識する取引にはならない、ということにとどまります。
したがって、自己株式を売却する個人は、譲渡所得あるいは配当所得が生じることになります。
この場合の価格は、所得税基本通達59-6に示されており、創業者であるご質問者は、中心的な同族株主に該当すると思われるため、財産評価基本通達の小会社に該当するもの等として評価されることになります。
詳しい評価方法は割愛しますが、把握されている相続税評価額よりも高くなると思われます。
その算定された価格の1/2未満で、会社に株式を譲渡した場合は、その算定された価格で譲渡したものとして、譲渡所得税が課されることになります。
さらに、株式を低い価格で譲渡することにより、他の株主の株式の評価額が上がることになり、後継者の方などに贈与があったものとされ、贈与税が課される可能性があります。
また、会社が保有する自己株式を、低い価格で後継者の方などに譲渡した場合、役員の地位に基づく労務の対価として、役員給与課税が適用される可能性もあります。
会社に自己株式として株式を売却する場合には、その価格について、専門家である税理士に相談し、慎重に決めることをお勧めします。
《担当:税理士 北岡 修一 》
編集後記
自己株式の買取りについては、資本取引だから税金がかからないと気楽に行ってしまっている例をたまに見かけます。この場合の課税方式は結構複雑なので、慎重に行っていただければと思います。
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