実践!事業承継・自社株対策
無対価適格合併【実践!事業承継・自社株対策】第175号
2023.11.16
Q 私は以前父の会社(以下A社とする。)で働いていましたが、20年前に独立しました。父が高齢になって今後の事業継続を悩んでいるようでした。
父のA社に興味もあったので、父に合併の話をもちかけました。父は快く承諾しました。
さて、合併を行うにあたって、所得がでない、適格合併をしたいと思っています。どのような要件を満たせばいいでしょうか。
また、株式を発行しないことも可能な場合があるとも聞きましたが、今回の合併の場合は該当しますか。
私は自分の会社(以下B社とする。)の100%出資者で、A社は父が100%出資しています。
A おっしゃる通り、適格合併を行う場合は、お父様の会社の資産と負債をそのまま簿価で引き継ぐことができるため、合併により所得は発生しないことなります。
さて、適格合併の要件をみていきましょう。適格合併の要件は、A社とB社の関係性により異なります。今回のA社とB社の関係は完全支配関係があるといえます。
これは、相談者様とその親族であるお父様を1つのグループと考え、そのグループが、A社とB社それぞれの株式を100%所有しているためです。
そしてこの場合の適格要件は、以下の2つです。
1.金銭等不交付要件
2.継続保有要件
金銭等不交付要件は、読んで字のごとく、合併の対価としてお父様にお金(現金)を支払わないことです。その代わりにB社株式を発行することになります。
継続保有要件は、合併前の完全支配関係を合併後も維持することです。
よって、相談者様が合併に際して、お父様に自社(B社)株式を発行し、その後継続して完全支配関係を続けるのであれば、適格合併に該当します。
これに加え、株式含め全く対価を支払わない、無対価合併という方法があります。これを行う場合もう1つの要件を満たす必要があります。
これは、A社の株主の株式保有割合とB社の株主の株式保有割合が同じ必要があります。
この点、A社はお父様が、B社は相談者様がそれぞれ100%保有していることから、株主の株式保有割合は同じではないため無対価による適格合併はできません。
なお、お父様からA社株式の譲渡、ないし贈与または相続を受けてからの合併でしたら、無対価合併によることが可能と考えます。
《担当:税理士 青木 智美》
編集後記
11月とは思えないほど、暖かくときには暑いくらいの日が続いてまいりましたが、ついに少しずつ寒くなってまいりました。
花粉のない春のような陽気でとてもよかったのですが、そろそろ衣替え始めようと思います。
メルマガ【実践!事業承継・自社株対策】登録はコチラ
⇒ https://www.mag2.com/m/0001685356.html