実践!事業承継・自社株対策
相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡 (自己株式の譲渡)した場合【実践!事業承継・自社株対策】第185号
2024.02.08
Q 私の父は都内で建築業のA社を運営しています。最近、父は以下のようなことを言っていました。
・父に万一のことがあった時は、私と母に株式を承継させるつもりだ。
・お金はほとんどなく相続税が払えないはずだから、A社にA社株式を売却すれば、すぐにお金は作れる。
・株式譲渡は税金が20%程度だから、ある程度売却すれば生活にも困らない。
相続税のことはよくわからないのですが、父の言うとおりにすれば、税金分のお金を確保することはできるのでしょうか。
A 相続時に、株式をその発行会社に譲渡すること(ご質問のケース)は、資金確保の対策のために行うことがあります。
このように、株式をその発行会社に譲渡することを、自社株式の譲渡といいます。
自社株式の譲渡は、通常の場合は、一種の配当(みなし配当)と考え、税金はかなり高くなります。
この場合の所得は、株式譲渡の約20%の税率(分離課税)で計算できず、配当所得として総合課税となります。
総合課税は、所得が上がれば税率も上がる累進課税により税金がかかることになります。
ただし、相続開始の日の翌日から、相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内に行った、自己株式の譲渡は、譲渡所得とする特例があります。
まさに今回のような、相続税の資金確保によるやむを得ない事情への配慮と考えられます。
よって、ご相談者様は譲渡所得として計算することができ、納税資金を十分確保できる可能性があります。
注意点としましては、この特例は相続税を支払った人を対象としている点です。
配偶者の相続税は優遇されており、相続財産の1/2または、1億6,000万円のいずれか多い金額までは、相続税はかかりません。
お母様は相続税の納税がなければ、この特例が利用できません。
納税がなければ、株式を売却することもないのであれば問題はありませんが、生活費のために譲渡を検討している場合には、所得税についても念頭におく必要がありそうです。
《担当:税理士 青木 智美》
編集後記
2月にも入りかなり寒くなってきました。
税理士事務所では、12月決算、確定申告と何かと忙しい時期になります。
3月決算の会社が一番多いため、そろそろ締めの時期が近づいてくると忙しさに追われる人もいるのかと思います。
寒さに負けず、頑張りましょう。
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