実践!事業承継・自社株対策
配当がなく、2期連続赤字でも比準要素数が1の会社に該当しない場合【実践!事業承継・自社株対策】第199号
2024.05.16
Q 私の会社は、直前期、前々期と赤字が続いていました。当初は息子への事業承継を考えていたものの、業績不振もあり先延ばしにしておりました。
ただ、前期は赤字だったものの、古くからの友人より大口の取引先の紹介を受けたことにより、見通しが随分と明るくなり、改めて事業承継を考え始めました。
業績が悪かったことは非常に苦しいことではありましたが、株式を譲渡するのであれば今しかない、とも考えております。
弊社の会社規模は大会社であり、類似業種比準価額により評価する会社となります。配当はしておりませんが、純資産は潤沢にあります。
利益も2年間赤字(3年前は黒字)であったことから、かなり安い株価になるのではないかと考えておりますが、いかがでしょうか。
A ご相談者様の状況ですと、比準要素数が1の会社に該当する場合は、会社規模が大会社であっても、類似業種比準価額が25%しか利用できません。
残りの75%は、純資産価額により評価する必要があります。
まずは、比準要素数1の会社とは、
1.直前期基準
2.直前々期基準
いずれでも下記の3つ金額のうち、2つが0の会社をいいます。
(1) 1株当たりの年配当金額 ⇒対象期およびその前期の2年間平均による
(2) 1株当たりの利益金額 ⇒対象期または、対象期およびその前期の2年間平均による
(3) 1株当たりの純資産価額 ⇒対象期
さて、ここで貴社は、配当が出ておらず(1)は0円となります。
一方、純資産は、潤沢とのことから、(3)は0円ではありません。
現状、比準要素数は、最低1はあることになり、(2)が0になるかどうかで、上述の比準要素数が1の会社に該当するか否かが分かれます。
まず、直前期基準で考えてみますと、対象期(直前期)およびその前期の利益はともに赤字で、単独であっても平均しても利益金額は0円となります。
つまり現時点では、比準要素数が1の会社に該当するということになります。
次に、直前々期基準で考えてみます。対象期(直前々期)は赤字です。対象期の前期(つまり直前々期の前期)は、黒字です。
対象期とその前期の2年平均で、利益がでればいいわけですが、このためには、対象期の赤字よりも、対象期の前期の黒字の金額が上回っている必要があります。
まとめますと、直前々期の赤字を直前々期の前期の黒字が上回っているときに限り、比準要素数の数が2(利益と純資産)となり、比準要素数が1の会社として評価する必要がないことになります。
この判定のポイントとなるのは、利益金額については、対象期「または」平均となっており、選択が可能な点です。
ご相談者様におかれましては、上記を踏まえて確認していただいた上で、評価していただければと存じます。
《担当:税理士 青木 智美 》
編集後記
ゴールデンウィークいかがお過ごしでしたでしょうか。
特段どこにも行きませんでしたが、ゴールデンウィーク最終日に新宿に買い物に出かけました。
やはり、海外からの旅行客が多く、日本か錯覚するほどです。今後、海外気分を味わいたいときは、休日の新宿に出向くことにします。
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