実践!事業承継・自社株対策
『比準要素数が1の会社の判定が類似業種比準価額へ与える影響』(第199号の続き)【実践!事業承継・自社株対策】第203号
2024.06.13
Q 前回のご回答より、比準要素数が1の会社であるかどうかを判定するにあたって、利益の判定においては次のとおりと認識しました。
(1)対象期と、(2)対象期とその前期の2年間平均の、いずれか高い方を選択することができる。
さらに、この対象期については、直前期と直前々期の2つを使うことができる。
これにより、利益の金額は0円とならず、他に配当を支払っていたり、純資産価額がプラスであれば、比準要素数が1の会社から脱却できる、とのことでした。
比準要素数の判定にあたって、直前期の高い方を選択してしまうと、最終的な株価も高い評価となるのでしょうか。
A
(1) 比準要素数が1の会社であるかどうかの判定にあたって選択した要素金額と、
(2) 類似業種比準価額の比準割合の計算で利用する比準要素の金額は、
必ずしも一致させなくてよいと考えます。
なかなかイメージが難しいように思いますので、丁寧に説明いたします。
まず、配当についてです。
類似業種比準価額の計算に利用する1株当たりの年配当金額は、直前期と直前々期の平均額となります。
これは、比準要素数が1の会社であるかの判定の基準と一致し、ズレは生じません。
同様に、純資産価額も直前期の金額をいずれも使うため、ズレは生じません。
差が生じるのは利益です。
類似業種比準価額の計算に利用する1株当たりの年利益金額は、直前期または、直前期と直前々期の平均額のいずれかとなります。
比準要素数が1の会社であるかの判定では、比準要素数を増やすために利益の平均額、つまり高い金額を選択したとします。
そして、ここで選んだ高い金額を、類似業種比準価格を計算する際に利用しなければならないか、というご質問かと思います。
この点、通達を見ても、類似業種比準価額の計算で利用する利益金額について、比準要素数の判定に使った数値を、必ずしも利用しなければならない、ということにはなっていません。
したがって、比準要素数が1の会社であるかどうかの判定にあたって、金額の大きい方を選んだとしても、類似業種比準価額を上げるものではありません。
ただし、お使いの計算システムによっては、自動的に低い方が選ばれたり、比準要素数の判定結果がそのまま類似業種比準価額の計算に連動することがありますので、その点ご注意ください。
《担当:税理士 青木 智美 》
編集後記
そろそろ梅雨に入る季節でしょうか。
台風が発生し、交通機関の乱れが気になるところです。
在宅勤務もあり、以前と比べて、働きやすい環境ができつつあるのかとは思います。
あとは、台風が災害クラスにならないこと祈るばかりです。
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