実践!事業承継・自社株対策
3年以内に不動産を取得した場合の純資産評価【実践!事業承継・自社株対策】第210号
2024.08.01
Q 弊社は不動産業を営む同族会社ですが、この度、自社株の一部を息子に贈与したいと考えております。
純資産価額を計算するにあたって、3年以内に購入した不動産は、時価評価をしなければならない、と聞いております。
この時価とはどのように評価するのでしょうか?
また、販売用や賃貸用の不動産など、すべてが対象となるのでしょうか?
A まず、対象となる不動産ですが、課税時期前3年以内に取得した土地や建物となります。借地権なども含まれます。
課税時期というのは、ご質問の場合は贈与したとき、となります。したがって、そこから遡って3年以内に取得した不動産となります。
純資産評価は、直前事業年度の決算に基づいて行うことが多いですが、直前期末から遡って3年以内ということではありません。
また、この取得には、購入や建築の他、交換や買換え、現物出資、合併、現物分配などによる取得も含まれます。
ただし、対象となる不動産は固定資産であるものです。
販売用の不動産は含まれません。
販売用の不動産は、評価自体が路線価などに基づいて行うのではなく、販売価格から予定経費および適正利潤等を控除して行うことになっています。
次に時価の算定ですが、次の3つが考えられます。
1.帳簿価額
2.相続税評価額を準用
3.鑑定評価額
購入してからあまり時間が経っておらず、時価の変動がほとんどない場合は、購入した金額である帳簿価額で評価することができます。
ただし、購入価額に特別な事情がある場合(高過ぎたり安過ぎたり)は、この方法は使えない場合があります。
なお、建物は購入価額から減価償却費を控除した帳簿価額となります。
2つ目の相続税評価額の準用は、路線価は公示価格の80%水準で設定されているため、相続税評価額を計算した上で、これを0.8で割戻して評価する方法です。
ただし、相続税評価額を準用して出した金額と帳簿価額が大きく乖離する(評価が低過ぎる)場合などは、この方法によることが適切でない場合もありますので、充分な検討が必要です。
鑑定評価額は、不動産鑑定士が鑑定した価額ですので、最も時価を反映したものと考えられますが、物件の数によっては多額の費用がかかることが難点です。
以上、時価評価については、専門家を含めて慎重に検討することが重要です。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
今回の不動産の時価評価は、よく「3年しばり」と言われています。
法人で不動産を取得した場合は、3年経たないと株価が下がらないよ、というものです。
株価引き下げ対策で不動産を購入することもありますが、その効果は3年先でないと出てこないということですね。ご注意ください。
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