実践!事業承継・自社株対策
親族から自己株式を買い取る場合の価格【実践!事業承継・自社株対策】第217号
2024.09.27
Q:先週、親族から相続後に、会社が自社株を買い取るという話がありました。
相続後に限ったことではないですが、親族から自己株式を買い取る場合の価格は、どのように決めたらよいでしょうか?
A:個人から法人に株式を譲渡する、ということで、この場合には所得税法59条が参照されます。
所得税法59条は、時価課税のことが定められております。
個人が法人に対して、資産を贈与または著しく低い価格で譲渡した場合には、時価で譲渡があったものとみなす、という規定です。
この場合の著しく低い、というのは1/2未満、ということになります。
さらに、譲渡した資産が株式である場合には、所得税法基本通達59-6に、時価の算定方法が定められています。
この算定方法が、個人から法人に株式を譲渡する場合の参考となります。
それによれば、非上場の同族株式については、相続税の評価に使われる「財産評価基本通達」の評価方法をベースに、下記のように評価することとなっています。
財産評価基本通達では、同族株主は、原則的な評価方法(類似業種比準方式と純資産方式)、それ以外の株主は、例外的な評価方法(配当還元方式)となります。
その上で、
1.同族株主に該当するかどうかは、譲渡前の議決権数により判定する。
2.譲渡した株主が、中心的な同族株主の場合は、小会社に該当するものとして評価する。
3.その会社が、土地や上場有価証券を有しているときは、譲渡時の時価により評価する。
4.純資産方式で評価する場合、含み益に対する法人税相当額の控除はしないで計算する。
上記2の中心的な同族株主とは、
同族株主とその配偶者、直系血族、兄弟姉妹および一親等の姻族(一定の法人を含む)の議決権割合の合計が、25%以上である場合のその株主
をいうことになります。自分を中心に近い親族で25%以上の株式を持っている人、ということですね。
その方々は、小会社として評価するとなっていますが、それは次のような評価方法となります。
類似業種比準価額×0.5 + 純資産価額×0.5
通常、類似業種比準価額の方が、評価が低くなることが多いですが、純資産価額も半分入れないといけない、ということですね。
たとえ、類似業種比準価額一本で評価できる会社であっても、上記の評価方法によることになります。
以上のような、通常よりも評価額が高くなる方式で評価した金額で、自己株式を買い取ることが基本となります。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
自己株式の買い取り価格は、なかなか悩ましいものがあります。
買い取る株主がどのような方なのか(親族や社員や取引先など)によっても、税法上の適正な価格というのは変わってきます。
是非、安易に考えずに、ここは税理士に相談して欲しいですね。
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