実践!事業承継・自社株対策
事業承継税制5年経過後の取消事由【実践!事業承継・自社株対策】第220号
2024.10.17
Q:事業承継税制の特例を使って、父から株式の贈与を受けようと考えています。
事業承継後5年間は、様々な納税猶予の取消事由があるとのことですが、5年経過後はどんなことに注意すればよいのでしょうか?
A:特例事業承継税制は、確かに様々な認定取消事由がああります。
特に、5年間は様々な取消事由に注意しなければなりません。正確には、納税猶予にかかる贈与税の申告期限の翌日から5年間、ということになります。
この5年間は、たとえば次のような取消事由があります。
・後継者が代表者を退任した場合
・議決権同族過半数要件を満たさなくなった場合
・後継者の同族内筆頭要件を満たさなくなった場合
・納税猶予対象株式を譲渡した場合
・雇用の平均8割維持要件を満たせなかった場合に、実績報告を行わなかったとき
・一定の会社分割や組織変更があった場合
・解散した場合
・資産管理会社に該当した場合
・総収入金額ゼロに該当した場合
・資本金・準備金を減少した場合(欠損填補除く)
・合併により消滅した場合
・株式交換・株式移転により完全子会社となった場合
・上場会社・風俗営業会社に該当した場合
・黄金株を後継者以外の者が保有した場合
・後継者の代表権・議決権を制限した場合
・年次報告書や継続届出書を未提出又は虚偽の報告等をしていた場合 等
非常に多いですね。
5年間は、上記に該当しないよう気を付けなければなりません。
ただし、5年間を過ぎると、取消事由は次のものだけとなります。
・解散した場合
・資産管理会社に該当した場合
・総収入金額ゼロに該当した場合
・資本金・準備金を減少した場合(欠損填補除く)
・継続届出書を未提出又は虚偽の報告等をしていた場合 等
この中で、解散や総収入金額がゼロになることは、そうはないでしょう。
資本金も減資をしなければよいし、継続届出書は3年に1回出せばよいので、忘れないようにすれば大丈夫です。
そうなると、最も注意しなければいけないのは、資産管理会社に該当しないようにすることでしょうか。
資産管理会社には、資産保有型会社と資産運用型会社の2つがあります。
資産保有型会社とは、有価証券、自ら使用していない不動産、現金・預金等の特定資産の保有割合が、総資産の70%以上である会社です。
また、資産運用型会社とは、上記特定資産からの運用収入が、総収入金額の75%以上である会社です。
このような会社にならないよう、注意しておく必要があります。
なお、5年後以降、対象株式を譲渡した場合や、合併、株式交換等があった場合は、対象株式分だけは納税猶予が切れ、納税が発生することになります。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
事業承継税制は、認定が取り消される事由がたくさんあるので、リスクが大きいと考える人が多いように思います。
ただ、上記のように5年経過後はほとんど取消事由がなくなってしまいます。
5年間をしっかり乗り越える覚悟があれば、事業承継税制を使うのも良いのではないかと思いますね。
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