実践!事業承継・自社株対策
属人的株式か種類株式か【実践!事業承継・自社株対策】第221号
2024.10.24
Q:私の創業した会社を、息子に継がせようと思っていますが、経営判断にまだまだ不安なところがあるため、拒否権付き株式(いわゆる黄金株)を、私が持とうと思っています。
ただ、黄金株は種類株式であるため、登記する必要があるとのことで、できればそれは避けたいと思います。
種類株式の他に、属人的株式というものがあり、株主ごとに違った取り扱いができるとのことで、これを活用することもできるのでしょうか?
A:確かに属人的株式であれば、登記事項とされないため、外部からはその存在や内容を知られることはないので安心です。
ただし、属人的株式で株主ごとに違った取り扱いができるのは、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会における議決権に限られます。
したがって、拒否権を持つという取り扱いはできません。
ただ、中小企業庁の発行する「事業承継ガイドライン」では、次のような方法が紹介されています。
例えば株式の大半を後継者に生前贈与し、先代経営者は1株だけ保有している状態において、
先代経営者が株主である限りは議決権を100個とする、としておき、さらに「(先代経営者)が後見開始の審判を受けた場合においては、議決権は1個となる」旨を定めておけば、会社の意思決定に空白期間が生ずることを防止することができる。
これは、認知症等により判断能力が低下した場合への対応策、ということで紹介されていますが、拒否権付株式と同じような効果が期待できます。
ただし、拒否権付株式と違うのは、拒否権付株式は株主総会の決議だけでなく、取締役会の決議も対象とすることができる、ということです。
上記の議決権100個というのは株主総会における議決権ですので、取締役会は対象となりません。
通常業務においては取締役会で決議される事項も多いため、やはり本来の拒否権を行使するためには種類株式の登記をされた方が良いのかと思います。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
大分寒くなってこのまま冬になるのかと思ったら、また暖かい(暑い)日もあり、変動の激しい時期ですね。
体調管理には、是非充分ご自愛いただければと思います。
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