実践!事業承継・自社株対策
業種の選択によって類似業種比準価額に変化はあるか【実践!事業承継・自社株対策】第222号
2024.10.31
Q:私の会社は、祖父の代から飲食業を行っています。
父からの事業承継も数年前に無事終わりました。
ただ、結構株価が高く株式の承継には時間を要したことから、自分の子供に承継させるときは、もう少し株価を抑えられないかと考えております。
事業承継を父と話す際に、会社の株式の価格について何度も話をし、類似業種比準価額についても勉強しました。
類似業種比準価額はどの業種目を選択するかにより株価が変動することがわかりましたが、
もし、今の事業と親和性の高い業種で、類似業種の株価が一番安いものを始めれば、株価が引き下がると考えてよろしいでしょうか。
A:類似業種比準価額は、おっしゃる通り、貴社が行っている主な事業がどんな事業であるかにより、業種目を選択することになります。
ただ、単純に類似業種の株価が安いという点だけに注目するだけでは十分ではありません。
なぜならば、類似業種比準価格の計算は株価に、自社と類似業種の会社の配当・利益・純資産を比較して、どれだけ差(魅力度)があるかを乗じて計算するからです。
たとえば、貴社の業種、飲食業に注目してみましょう。
貴社がたとえばレストラン経営をしている場合、類似業種比準価額の小分類で101番食堂、レストランを選択することになります。
また、中分類の100番飲食店と比較して、いずれか低い株価を選択することができます。
さて、この100番と101番を比べてみましょう。
<100番 飲食店の類似業種の情報>
・令和6年8月株価 606円 … 101番の1.92倍
・配当金額 3.4円 … 101番の3.09倍
・利益金額 22円 … 101番の1.57倍
・純資産価額 150円 … 101番の1.87倍
<101番 食堂、レストランの類似業種の情報>
・令和6年8月株価 314円
・配当金額 1.1円
・利益金額 14円
・純資産価額 80円
これを見てわかることは、101番と比較して100番の株価は1.92倍と高いため、101番の株価を基に計算した方が、類似業種比準価額は安くなるのでは、と思われます。
しかし、上述のとおり、これに貴社と類似業種の会社の配当・利益・純資産を比較して(魅力度を計算し)、株価に反映する必要があります。
101番の方は、株価は低いけれども配当・利益・純資産も100番と比べて低くなっています。
ということは、貴社の配当・利益・純資産と比べた場合、101番と比べた方が貴社の魅力度は高くなります。
101番の方が株価は低いけれども、それに乗じる貴社の魅力度は高くなるということで、場合によっては101番でやった方が、類似業種比準価額が高くなる可能性もあります。
このように類似業種の株価だけでなく、他の3要素も比較して、具体的に計算した上で、ご検討をいただければと思います。
《担当:税理士 青木 智美》
編集後記
最近は、事業承継や後継者へよい資産を引き継ぐためのお手伝いの機会を多くいただくが特に増えてまいりました。
忙しくしていると、本当に1週間が秒のようにすぎていきます。
成果が出るには時間がかかるものも多いですが、ゴールに向け現状最適なスタートをともにきれることは、うれしい限りです。
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