実践!事業承継・自社株対策
会社の事業所不動産を個人で買い取る場合【実践!事業承継・自社株対策】第223号
2024.11.07
Q:私は現在父から継いだ介護事業を行う会社の代表をしております。この度、会社が賃貸している事業所不動産を、大家さんから買い取らないかと、打診を受けています。
会社で買い取るのは現状厳しい面もあるため、父が買い取って会社に賃貸してはどうかと考えていますが、これは父の相続税対策にもなるでしょうか?
A:お父様が、会社の事業所の土地建物を買い取るとのことですが、これは大きな相続税対策になります。
まずは、お父様の現金預金が減って、土地建物になります。
土地は路線価による評価、建物は固定資産税評価額による評価がベースとなりますので、通常、買取り価格よりも大幅に評価額は下がります。
したがって、まずは現金預金が土地建物に置き換わっただけで、相続税対策になります。
さらに、これを会社に賃貸するということですので、土地は貸家建付地評価となり、上記の評価額から約20%評価減がされます。
建物は貸家評価となり、上記の評価額から30%評価減されます。
また、この土地は小規模宅地特例の対象にもなります。
この場合は、親族が経営する会社に賃貸しているため、「特定同族会社事業用宅地等」となります。
これに該当すると、上記の貸家建付地の評価額から、さらに400m2まで80%の評価減の適用を受けることができます。
当初の現金預金の額からすると、相当低い評価額になるのではないでしょうか。
なお、この事業用の小規模宅地特例は、居住用の小規模宅地特例(330m2まで80%評価減)と完全併用することができます。
すなわち、これと併用すれば730m2までの土地が80%も評価減されるわけですから、ものすごい節税効果といえます。
ただし、「特定同族会社事業用宅地等」の小規模宅地特例の適用を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
1.その会社はお父様とその親族等で、50%超を保有していること
なお、お父様が保有していなくても構いません。
2.その土地を相続した相続人が、相続税の申告期限までに役員であること
既にご質問者が代表であるので問題ありません。
3.その土地を相続税の申告期限まで保有していること
4.会社の事業が不動産賃貸業でないこと
介護事業とのことで問題ありません。
5.会社は個人に賃借料(家賃)を支払っていること
きちんと相場の家賃を支払っている必要があります。
以上の要件を満たすことは、それほどハードルの高いことではありませんので、これを実行していただければ、効果の高い相続税対策になるかと思います。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
今年もまたあっという間に11月になりました。
まだコートは必要ないですが、大分寒くなってきましたね。
相続税対策などは、暦年というのは1つの目安ですので、今年中に何かやるべきことがあれば、あと2か月を切りましたのでしっかり実行していきたいですね。
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