実践!事業承継・自社株対策
非上場株式の評価-会計検査院の指摘【実践!事業承継・自社株対策】第224号
2024.11.14
Q:弊社は、株式の相続税評価において大会社に該当し、代表である父の株式は、類似業種比準価額で評価しています。
先般、会計検査院から非上場株式の評価について指摘があったそうですが、どのような指摘なのでしょうか?
また、今後何か改正されるのでしょうか?
A:2024年11月6日に、会計検査院が内閣に「令和5年度決算検査報告」を行いました。
その中で、「相続等により取得した財産のうち取引相場のない株式の評価」についての報告があります。
その内容としては、次のように大きく2点あります。
1.原則的評価方式による評価について、類似業種比準価額は、純資産価額に比べて相当程度低い水準にある。
2.特例的評価方式(配当還元方式)による評価について、還元率10%は近年の金利水準と比べて高い。
まず1の方ですが、類似業種比準価額の中央値は、純資産価額の中央値の27.2%になっているとのことです。
類似業種比準価額は、純資産価額よりも低く評価されており、株式評価の引き下げ策としては、類似をいかに多く取れるか、ということは重要なポイントでした。
そのためには、会社の規模区分を大きくすることが肝要でした。
会計検査院はその点を、株式の評価の公平性が必ずしも確保されているとはいえない、と指摘しています。
2の方は、配当還元方式の還元率(10%)は、評価通達制定当時(昭和39年)の金利等を参考にするなどして設定されている。
その後、還元率は金利の水準が長期的に低下する中で見直されていない、と指摘しています。
10%の還元率に基づいて算定される株式評価額は、相対的に低く計算されている、ということです。
この還元率を下げると、配当還元方式による株式評価額は上がることになります。
いずれにせよ、1も2も株式評価額が上がる方向への指摘です。
会計検査院から指摘事項があると、各省庁が法改正や通達改正を行う可能性が高くなります。
指摘に対して、何らかの対応が必要になるということです。
ご質問者の会社の同族株主は類似業種比準価額、それ以外の株主は配当還元価額で評価されますので、上記指摘の2つとも今後の展開を注視しておく必要があります。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
近年はマンション評価の改正があったり、今回は非上場株式の評価の改正につながりそうな会計検査院の指摘ですね。
いずれも相続税を上げていくような方向性です。
それにしても現在の評価体系の中で、事業承継や相続税対策を各社実行していますので、拙速な改正は避けてもらいたいと思いますね。
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