実践!事業承継・自社株対策
会社を清算する場合の税金【実践!事業承継・自社株対策】第69号
2021.09.30
Q:当社は、同族会社で内部留保はかなりありますが、メインの事業を譲渡して売上がなくなったため、清算しようと考えています。
できるだけ税金を抑えたいのですが、この場合の税金はどのようにかかってきますか?
A:会社を清算する場合は、まずは、解散を行います。解散をすると取締役は地位を失うことになりますので、退任することになります。
そこで、まずは代表取締役や取締役に退職金を支払うことになります。
退職金にかかる所得税、住民税は、退職所得控除を控除した後、2分の1課税となりますので、税金が優遇されています。
内部留保が多いとのことですので、ここでできるだけ多くの退職金を取ることができれば、税金を抑えることにつながります。
ただし、不相当に高額な役員退職金は税務否認される可能性がありますので、役員退職金規定などに基づき、適正な範囲の退職金にすることが重要です。
解散をした場合には、そこで一旦事業年度が区切られ、解散事業年度の法人税の申告をする必要があります。
上記役員退職金を計上することにより、法人税も抑えられるのではないかと思います。
解散後は、清算事業年度となります。ここでは清算人が、会社の財産を整理し換金していきます。
最終的に残余財産が計算されることになります。
清算が結了した場合には、残余財産を分配する前に法人の確定申告をする必要があります。
ここでの法人税は、通常の事業年度の法人税と同様に、清算事業年度の所得に対して、法人税がかかってきます。
最後に、株主に対して残余財産の分配が行われます。
この残余財産の分配額のうち、資本金等の部分は、株式の譲渡所得となります。ここはあまり出ないことが多いです。
また、資本金等を除く利益剰余金からなる部分については、みなし配当となります。配当金と同じ扱いになる、ということです。
内部留保がかなりあるとのことで、このみなし配当の金額が多くなる可能性があります。
みなし配当は、会社で20.315%の源泉徴収をした上で、株主に支払います。
株主は、配当所得として確定申告することにより、この源泉徴収税額を所得税から控除する(取り戻す)ことができます。
ただし、この配当所得は総合課税となり、給与所得や不動産所得などと合算して、累進税率により課税されます。
金額が大きい場合は、最高税率(住民税含めて55%)までいく可能性があります。
以上の流れになりますが、解散清算する場合には、最終的な税金のシミュレーションまでしてみた上で、本当に実行するかどうかを決めることが大事です。
場合によっては、解散清算せず、その内部留保を使って別途の事業を考えた方がよい場合もあるのではないかと思います。
《担当:税理士 北岡修一》
編集後記
自民党の総裁選はなかなか興味深かったですね。メディアも連日放映していましたので、相当な自民との宣伝になりました。やはり今回の功労者は菅さんということになるのでしょうね。
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