実践!事業承継・自社株対策
同族株主以外は、配当還元評価【実践!事業承継・自社株対策】第8号
2019.03.22
ここ数号は、非上場企業の株式の評価について書いております。
基本的には、オーナー一族、同族株主の評価について、書いてきました。
同族株主の株価の評価は、類似業種比準価額にしろ、純資産価額にしろ、結構な額の評価となります。
それに比べると、同族株主以外の株主が持つ株式の評価は、極端に低くなることが多いですね。
同族株主と、同族株主以外の差は、何でしょうか?そうです、会社の支配権があるかないかの差です。
会社の経営や財産に関して、裁量がある、支配をしている、ということが、株式の評価に反映されてきます。
では、同族株主以外が、非上場会社の株式を持つ意味はどこにあるのでしょうか?
それぞれの会社の事情はあるでしょうが、一般的には株式を持つことにより、配当が期待できる、ということです。
株式を市場で高く売ることもできませんし、少数の株式では決議に影響を及ぼすこともできません。唯一株式を持つ意味は、配当が期待できるということではないでしょうか。
そこで、同族株主以外の少数株主が持つ非上場企業の株式の評価は、配当還元評価方式によることになります。
配当金の額から割戻して、株式の評価を計算しようという評価方式です。
具体的には、次の計算式により、計算します。
配当還元価額=
その株式に係る年配当金額(注)/10% × その株式の1株当たりの資本金の額/ 50円
(注)年配当金額=
直前期末以前2年間の配当金額/2 ÷ 1株当たりの資本金の額を50円とした場合
の発行済株式数
※年配当金額が2円50銭未満となる場合、または無配の場合は、2円50銭とします。
上記の算式を見ると、ちょっと難しそうに見えますが、考え方は非常にシンプルです。
要は、2年間の配当金の平均額を、10%で割り戻して株価を計算しているだけです。
一旦、1株を50円として計算しているため、割り算が多くて難しく見えます。
簡単な例で、計算してみます。
(事例)
・1株当たりの資本金の額: 500円(資本金500万円)
・発行済株式数: 10,000株(1株50円とした場合:100,000株)
・直前期の配当金額: 500,000円
・直前々期の配当金額: 500,000円
(計算)
・年配当金額=(500,000円+500,000円)÷2÷100,000株=5円
・配当還元価額=(5円÷10%)×(500円÷50円)=500円
上記の会社は、資本金500万円に対して毎年50万円の配当、すなわち10%の配当をしています。
10%の配当をしていると、10%で割り戻して計算しますので、ちょうど1株あたりの資本金と同じ額の評価になります。
10%の配当をしていれば、1株あたりの資本金(昔でいう額面金額)と同じ評価、20%の配当をすれば、その倍の評価になる、ということで、簡単に覚えておけばよいでしょう。
それを2年間の平均配当で行う、ということですね。
また、上記※のところに、年配当金額が2円50銭未満となる場合、または無配の場合は、2円50銭とする、と書いてありますが、
これは50円に対してです。2円50銭は50円に対して5%です。すなわち、年5%未満の配当の場合は、5%配当したものとして計算する、ということです。
この場合には、1株あたり500円の株式であれば、配当還元価額は、250円になります。
無配であっても、1株あたり資本金の50%の評価になる、ということですね。
さらに、配当金には創立10周年記念配当などの、記念配当や特別配当などの非経常的な配当金は含めずに計算することになっています。
同族株主以外の非上場企業の株式の評価は、この配当還元方式で行いますので、同族株主以外に株式を譲渡する時、同族株主以外の者が株式の贈与を受けた時などは、この評価額がベースになる、ということです。
編集後記
確定申告が終わってホッと一息ですが、3月末は年度末ですね。
3月決算の会社の方などは、最後の追い込み頑張ってください!
また、3月末と言えば今年は消費税の増税半年前です。
3月末までに請負契約を締結すれば、10月以降引き渡しでも8%という経過措置もありますので、そのような契約がある場合には、意識しておくことも必要ですね。
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