実践!事業承継・自社株対策
非上場株式の売買価格は?【実践!事業承継・自社株対策】第9号
2019.04.05
ここ数回、非上場株式の評価方法について見てきました。
これらは、相続税の財産評価基本通達によるもので、基本的には、株式の相続や贈与の際における評価方法です。
ただし、非上場株式を売買する際にも、これらの評価方法が参考にされます。
非上場株式を売買する際の価格は、まずは直近(法人税では6カ月以内)で売買事例があれば、その価格を参照することになります。
ただし、適正と認められる価格である必要があり、純然たる第三者間での取引などがあれば、ということになるでしょう。
したがって、直近の売買事例で価格を決めることは、あまりありません。
実際に、非上場株式を売買する際には、売主と買主が誰であるかによって、売買価格を検討する必要があります。
たとえば、次のような関係です。左が売主、右が買主です。
1.個人(同族株主)→個人(同族株主)
2.個人(同族株主)→個人(少数株主)
3.個人(少数株主)→個人(同族株主)
4.個人(同族株主)→法人
5.まったくの第三者間
1.個人(同族株主)→個人(同族株主)
個人間の場合には、基本的には、相続税評価により売却していれば、特に課税上の問題は起こりません。
同族間ですので、原則的な評価方法である、類似業種比準価額や純資産価額をベースとして計算します。
2.個人(同族株主)→個人(少数株主)
個人間ですので、上記と同様、相続税評価をベースにします。
買主が同族ではなく、少数株主ですので、配当還元方式で計算された評価額がベースとなります。
3.個人(少数株主)→個人(同族株主)
これは2と、売主・買主が入れ替わったものです。
この場合には買主が同族株主ですから、相続税評価の原則的な評価方法である、類似業種比準価額や、純資産価額をベースとして計算します。
同族株主は、少数株主に売る時は配当還元価格で安く売れますが、買い戻す時には原則的評価で高くなるという、ちょっと理不尽なことになってしまいますね。
4.個人(同族株主)→法人
個人株主が法人に非上場株式を売る時は、所得税法の時価によることになります。
この場合、その株式を発行する会社の中心的な同族株主である場合は、次のような評価方法になります(所得税基本通達59-6)。
<相続税評価の原則的評価によるが、次の点を考慮する。>
・会社規模は、小会社として評価する。
・土地や上場株式などは、譲渡時点の時価で評価し直す。
・純資産価額を算定する際の評価益に対する法人税は控除しない。
相続税評価をベースとして、上記のような修正を加えることにより評価額は上がることが多いです。
5.まったくの第三者間
まったくの第三者間による譲渡(たとえばM&Aなど)の場合は、専門家が入っての評価や、交渉によって株価は決まるでしょうから、この場合は、その交渉によって決まった価格で何ら問題はありません。
以上、非上場株式の売買価格は、税法による制約がかなり多いですので、必ず専門家に相談して行うことをお勧めします。
編集後記
いよいよ新元号が決まりましたね。
令和、ローマ字表記は、REIWAとのことで、略すと「R」ということで、私としては嬉しいですね!(出身校)
令和はRの時代になることを期待して。
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