実践!事業承継・自社株対策
無償増資と株式分割【実践!事業承継・自社株対策】第90号
2022.03.10
Q 当社は1株あたりの金額が高いため、株式数が少なくなっています。
また、設立以来利益を出してきたので、利益剰余金は多くなっています。将来、社員にも株式を持たせていきたいと考えていますが、どのようにしていけば良いでしょうか?
A 社員に株式を譲ったり、ストックオプションなどを実施していくには、できるだけ株式数が多く、1株あたりの金額が低い方がやりやすいです。
1株あたりの金額を減らして、株式数を増やすためには株式分割という方法があります。
1株を2株に分割するとか、1株を10株に分割するなどが可能です。
この分割には以前は制限がありましたが、現在は何株に分割するかの制限はありません。
株式分割は取締役会の決議で行うことができますが、公告をする必要があります。
ただし、定款変更を行うことにより、公告を省略することもできますので、事前に検討しておく必要があります。
株式分割は、現在の資本金を増やさず、株式数だけを増やすことになります。
御社は、利益剰余金が多くなっているということもありますので、これを資本金に振替えることにより、お金を入れずに(無償で)資本金を増やすことも可能です。
これを、利益剰余金の資本組み入れといいます。
資本金も利益剰余金も純資産の部の科目ですので、純資産の部の中で金額が移動する、だけです。
お金を入れないで増資ができるため、無償増資とも言われています。
今まで積み立ててきた利益を、資本金に入れるので、以前はみなし配当として、源泉徴収をする必要があった時代もあります。
ただ、現在はこのみなし配当課税は廃止されており、税金がかかることはありません。
このような利益剰余金の資本組み入れと、株式分割をうまく使って、手続きだけで資本金および株式数を増やしていくことが可能です。
《担当:税理士 北岡 修一》
編集後記
1株は5万円でなければいけない、と思っている方も結構いるように思います。以前はそういう時期もあり
ましたが、現在は1株あたりの金額の制限はありません。
このあたりの会社法や税務は、昔とずい分変わってきているので、私もどうだったか頭の中が混乱することがありますね(笑)。
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