実践!社長の財務
役員給与の一部が損金不算入に【実践!社長の財務】第114号
2006.01.10
おはようございます。税理士の北岡修一です。
平成18年度税制改正大綱が、昨年12月15日に公表されています。
与党の税制改正大綱ですので、これがほぼ実際の税制改正になってきます。
今回は、抜本的な大きな改正はないものの、実務的に影響の大きいもの、いくつかあります。
今回は、そのなかでも、役員給与について取り上げてみます。
ということで、本日も「実践!社長の財務」いってみましょう!
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■□ 役員給与の一部が損金不算入に
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今回、ビックリしたのは、役員給与の一部の損金算入を認めない、という改正案が発表されたことです。
いわゆる個人事業者が、節税のため法人を活用するのを、防ごうというものです。
これは、今年から「新・会社法」が施行され、資本金制限がなくなりますので、簡単に会社が作れるようになる、ことの対策だと思います。
すなわち、個人事業者が法人成りして、法人で事業を行なうようになると、事業所得が、役員給与と法人所得 の2つに分かれることになります。
そして、役員給与については、自動的に、「給与所得控除」という給与所得者の”経費”が控除されることになります。
法人を設立して節税する、というのは、正にこの部分のメリットを受けるためでもあるのです。
それが、今回、封印されます。
具体的には、
・創業オーナー一族が、90%以上の株式を保有し、
・常勤役員の過半数を、オーナー一族が占める場合は、
・そのオーナーに対する役員給与のうち、給与所得控除に相当する部分は、損金算入を認めない。
というものです。
一人だけで会社を設立した場合や、家族だけで仕事をしている場合は、これに該当してしまいますね。
給与所得控除は、たとえば、
年俸 600万円だと、 174万円
800万円だと、 200万円
1200万円だと、 230万円 も、あります。
これが、法人税の所得計算上、経費(損金)にならないとすると、結構大きな影響がありますね。
実効税率 40% とすると、年俸1,200万円で、92万円も法人税が増えてしまいます。
ただし、対象にならない場合もあります。
役員給与と法人所得を合計した金額(すなわち、個人事業とした場合の所得)の、直近3年間の平均額が、
・800万円以下である場合
・800万円超3000万円以下で、役員給与の割合が50%以下の場合
は、対象外ということになっています。
すなわち、所得が少ない場合や、役員給与をあまり多く取っていない場合は、除外しますよ、とういことです。
この規定に引っかかってしまうと、せっかく法人を作った意味がありません。
いかに、これに引っかからないように、株主構成を考えるか、役員給与の額を、一定内に抑えるか、ということになってくるでしょう。
税理士や会計事務所の腕の見せ所、みたいな感じになってくるのでは、ないでしょうか。
その他にも、役員給与については、大きく2つ改正があります。
1つは、利益と関係なく支給される役員給与(定額の役員報酬)について、あらかじめ定めてある確定時期に支給する方式も認める、ということになります。
すなわち、毎月定額でなくても、あらかじめ時期を定めてあれば、その時に支給しても経費になる、ということです。
今まで、役員報酬は、毎月一定額でなければいけませんでしたが、この改正によって、7月や12月の社員の賞与時期と同じ時期に、年俸の一部を支給する、ということもできるようになりそうです。
また、もう1つは、利益連動型の役員給与も、一定の条件のもと認めるという規定ができます。
すなわち、利益に応じた役員賞与も、損金に認める、ということです。
ただし、これはほとんど上場企業に限定されるのではないでしょうか?
というのも、その一定条件は次のようなものだからです。
・報酬委員会における決定等の、手続を取ること。
・有価証券報告書等で開示されていること。
・非同族会社であること。
・損金経理をすること。
4番目は特に問題ありませんが、1番目と2番目は、ほとんど上場企業でしか行なっていません。3番目にあるように同族会社は、もともと対象になりません。
報酬委員会とは、商法やこれからの会社法で決められている、取締役会と同様の、法律上の会社機関です。委員会設置会社として、定款で規定しなければなりません。
また、有価証券報告書も、正式のものでないといけないようです。
ということで、ほぼ上場企業を対象にしたもののようですね。
今後、時間をかけて広く対象にしていく可能性はあります。
ということで、税務では常に懸案になる役員報酬の取り方、是非、今年の4月以降は、いろいろ考えてみてください。
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編集後記
昨日は、やることがいろいろあるにもかかわらず、高校サッカーの決勝を見ていました。
それにしても、野洲高校すごいですね。
とにかくプレーを見ていて、面白くて釘付けになってしまいました。
「クリエイティブ・サッカーで、日本の高校サッカーを変えたい。」という監督の想いが、見事に結実したサッカーでしたね。
動きに意外性があって、伝統の鹿実とは対照的でした。
あっちに行ったり、こっちに切り返したり、股の間は当たり前、ジャンプしながらヒールパスがあったり...
意外性の連続ですね。
勝ち目は薄いと思われていたものが、延長の末、本当に勝ってしまい、ゴールの瞬間、家族で「やったぁー!!」と叫んでしまった位です。
新興勢力が出てくる時というのは、本当に面白いものです。
野洲を見ながら、ビジネスでも、こういうビジネスをすると面白いな、と思っていました。
今までとは、違ったクリエイティブな観点で、既存ビジネスを見直してみる、意表をつくようなビジネスモデルを作る...
ウーン、会計事務所だとどんなスタイルだろう...と考えてしまいました。
野洲高校、日本一おめでとうございます!
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