実践!社長の財務
B/Sを穴のあくほど見る【実践!社長の財務】第164号
2006.12.25
おはようございます。税理士の北岡修一です。
平成19年度税制改正大綱で、特殊支配同族会社(実質一人会社)の役員給与の一部損金不算入制度が、改正されましたね。
この制度自体は、来年3月決算から課税になってきますが、すなわち実質一人会社の役員給与のうち、給与所得控除相当額は、損金の額に算入しないよ、ということです。
不合理な税制で、改正要求も多かったのですが、若干改正されました。
この制度の適用除外基準に、法人所得と役員給与の合計が、年800万円(3年間の平均)以下であれば、適用しないよ、というのがありました。
この800万円が、1600万円に引き上げられたのですね。
良かったです。
かなり、適用除外になる幅が広がったのでは?
年間800万円の社長給与の会社は、法人の申告所得が800万円以内であれば、適用除外になります。
社長給与が、1200万円であれば、法人の申告所得が400万円以内ですね。
これ以上の会社も、多いとは思いますが、救われる方も多いのでは..?
ということで、本日も「実践!社長の財務」いってみましょう!
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■□ B/Sを穴のあくほど見る
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今回で、今年最後のメルマガですね。今年も大変お世話になりました。
次回は、新年元旦1月1日の予定です...
おとそ気分で、果たして出せるのか...と思うでしょうが、これは必ず出します。とにかく、今まで1週たりとも休んでいませんから、絶対出し続けないといけないと、心に決めています。
まあ、それは別として、今回は、「利益と資金を一致させる経営」の最後です。
これを行なうには、最後は「B/Sを穴のあくほど見て欲しい。」ということに尽きます。
資金の問題は、結局はB/S(バランスシート=貸借対照表)の問題です。
キャッシュフロー計算書など作らなくても、B/Sを見ていれば、どこを改善していけばいいのかが、わかります。
B/Sを見ながら、思いをめぐらすのです。
これはもう、このメルマガで何回も言っているかも知れません。
あまり論理的ではないかも知れませんが、とにかく見て、自分で感じなければ、本当に改善しようとは思いません。特に経営者は、ヒマがあったらB/S見て欲しいですね。
ポイントは、いろいろあります。
業種や、業態によっても、当然B/Sの形は違うと思います。
まずは、大きく総資産を見てみよう。
いくらあるのか...
当社は、いくらの資産を回しているのか...
次に、その総資産の調達はどうなっているのか?
すなわち、自己資金と内部留保で調達している「自己資本」はいくらあるのか?
人から借りてきている「負債」は、いくらなのか?
これらのパーセンテージは?
いわゆる「自己資本比率」が、高くないと(少なくとも30%以上)、資金繰りは、苦しくなる。
うちが、苦しいのは、これが低過ぎるからか...
なぜ、低いのか?
でも、当社は増資するわけでもないし、自己資本を増やしていくためには、内部留保を貯めていくしかないな。
それには、利益を上げて、税金も払っていかないといけない。
そうしていこう!
では、調達してきた資金は、どのように運用しているのか...
資産の内訳を見てみよう。
固定資産と流動資産の割合は、どうなっている?
固定資産が多くて、資金が固定化していないか?
固定している資金が多いと、当然、資金繰りは苦しくなるよね。
改善することは、できないのか?
こんなに固定資産を持っている必要はあるのか?
資金化できるものは、ないのか?
次に、流動資産。
当社の現金預金はいくらある?
それは、何か月分の支払いをまかなえる額?
もし、収入がなくなったら、何ヶ月持つんだろうか...?
これでは、ちょっと恐ろしいな...
もっと、キャッシュを増やさないと!
では、キャッシュを増やすにはどんなことができそうか?
売掛金は、売上の何か月分ある?・・・そんなにあるのか?
もう少し回収早めないといけない・・・どうしたらいいか?
受取手形もあるけど、これはもう、なくしていかないといけない!
強い意志でやっていこう。
在庫は、売上の何ヶ月分ある?・・・これも多過ぎる!
こんなにいらないはず。ちょっとルーズになっている可能性がある。
在庫を減らす対策を、皆に検討してもらおう。
余分な資産が結構ある。
貸付金、立替金、前渡金、仮払金 ・・・・
これらは一体何だっけ?
よく内容を見てみないと。
こんなところにお金が行っていたら、お金がいくらあっても足りないよ。
今度は、負債も見てみよう。
買掛金は、売掛金と比べてどうか?
売掛金の額の方が、かなり多いな。
それはある意味当然だけど、本当にそうだろうか?
売掛金と買掛金のサイトがきちんと守られているだろうか?
買掛金を、売上の入金前に払ってしまっていないだろうか?
調べてみないと。
それによっては、きちんと交渉しないと...
当社の借り入れはいくらある?
長短合わせて、売上の何か月分あるのだろうか?
目安は3か月分かな。ちょっと多過ぎる。
3か月分くらいにしておかないと、返済が大変だ。
それ以内になるまでは、借入をしないでいこう。
そのためには・・・
ところで、B/Sの数字はこうなっているけど、これって本当に正しいの?
固定資産は、こんなにあるけど、本当にあるのか?
土地は、実際こんなにはないよね。買った時よりもずい分下がっているから、売ったら損が出るな。
有形固定資産は、減価償却制度でしょうがないかも知れないけれど、実際、売れるわけではないから、早く償却したい。
もしかしたら、もう使っていない資産もあるかも知れない...
無形固定資産や繰延資産などがあったら、これはもう経費の繰延であって、実際にはない資産。
換金性ゼロだから、本当は資産から除くべきか...
流動資産のほうにも、資産性のないものはあるか?
また、負債は本当に全部計上されているのか?
賞与引当金は、税法上損金にならないから、載せてないけど、実際、2ヶ月先に支払う賞与は、もう発生しているから、本当は負債にしないといけないな...
当社は、退職金規定があって、一部は共済掛金に積み立てているけど、会社から支給する部分も半分くらいはある。
今、勤めている人たちの退職金は、すでに発生しているから、これも本当は負債にしないといけないか...
これらの負債も考えると、実際、自己資本比率はもっと低いじゃないか...
そうやって、自己資本比率を見ないと、ぬか喜びになってしまう。
注意しないと...
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まあ、こんなように是非、B/Sを見ながら、ブツブツと自問自答してみてください。
まだまだ、いろんなポイントがあると思います。
B/S見ながら普段の仕事、現場の仕事を想像し、皆の顔、得意先のこと、仕入先のことを想像します。
現場を知っている経営者だからこそ、できることです。
B/Sと実際の会社の動きがつながってこそ、財務改善ができていくのです。
決して、専門家が机上の分析をやって、経営が良くなっていくわけではないのです。
経営者、幹部の皆様こそ、是非、B/Sを穴のあくほど、見て欲しいと思います。
編集後記
皆様の会社は、何日までですか?
当社は、若干早くて26日まで。明日大掃除-忘年会で終わりですね。
(まあ、それ以後も会社に出て来ざるを得ない人もいますが...)
ただ私は、28日まで毎日忘年会のみ入っています。
これも仕事のうちか...
ということで、本年もありがとうございました。是非、良いお年を!!
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