実践!社長の財務
原理原則で考える【実践!社長の財務】第317号
2009.11.30
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
今年の税制改正の議論は、混沌としているようですね。
毎年であれば11月末の今頃は、来年の税制改正の内容について、ほぼ決まったものが、毎日新聞で報道されているところです。
しかし、今年に関しては、所得税の扶養控除は廃止されるのか、高校生や大学生の扶養家族の控除は、どうなるのか、給与所得控除は?
中小企業の軽減税率は? ガソリン税の暫定税率は本当に廃止するの?相続税の計算方法の抜本改正はどうなるのだろうか...?
などなど、かなり重要な項目まで、未定・・・といった感じです。
正直どうなるかわからない、12月11日頃には大綱を発表すると言っていますが、果たしてこの状況で発表できるのか、発表できたとしても中途半端な議論で、中途半端な改正になるのではないか、という気がします。
ここはじっくり、あと1年かけて抜本的にやった方がいいのではないかなと、私は思いますが...さて、どうなるのでしょうか?
ということで、本日も、実践!社長の財務いってみましょう!
原理原則で考える
先週お話したように、これから数回「稲盛和夫の実学-経営と会計」という名著の内容について、皆様と共有していきたいと思います。
まず最初にこの「実学」の最も基本的な部分にあること、それが冒頭の「原理原則で考える」ということです。
これは稲盛経営の根幹にあたるものでもあります。
27歳で創業した稲盛氏は、それまでまったく経営の経験はなく、またそのような勉強をしたこともなかった。
したがって、何を基に経営をしていったらよいかわからない。
そこで稲盛氏が、判断のベースにしたのが、「人間として何が正しいのか。」ということです。これをベースに経営の判断をしていこう、と決めたというのです。
それは、会計においてもまったく同じであるというのです。
会計には、会計原則や会計において常識とされている慣行があります。
しかし、稲盛氏はそれらの原則や慣行を鵜呑みにするのではなく、様々な取引の会計処理において、「何が本質なのか?」を徹底して考えたのです。
その一例が、減価償却の耐用年数です。
一般に会計処理を行なうにあたって、減価償却は、税法で決められている「法定耐用年数」を使います。
これは国税庁が、資産の種類や業種等によって、様々な統計資料などから集計分析して、決めている耐用年数です。
この年数によっていれば、会計上も、税法上も問題はありません。
したがって、基本的には、多くの企業はこの耐用年数によって、減価償却を行なっています。
しかし、稲盛氏はこの法定耐用年数に疑問を持ちました。
当時、セラミックの粉末を成型する設備の耐用年数は、12年になっていました。しかし、現場の経験から言えば、機械の保守をきちんとして、どんなに大切に使っても、せいぜい5~6年持たせるのが精一杯だったそうです。
これは容易に納得できることではない...勝手に実質的な耐用年数で償却しても、税法上は認められませんので、税金を払いながら償却していかざるを得ない...こんな不合理なことはないと、稲盛氏は思うわけです。
稲盛氏曰く、
「発生している費用を計上せず、当面の利益を増やす、というのは経営の原則にも、会計の原則にも反する。そんなことを毎年平然と続けているような会社に、将来などあるはずがない。」
と考えたのです。たかが減価償却の話、ということではないのです。経営の根幹の問題ととらえています。
そこで、京セラでは、たとえ有税であっても実質的な耐用年数を独自に決めて、償却をすることに決めたのです。
このように、会計に対しても、原理原則で考えていく、いかに現状の姿を正しく会計に反映させるのか、これを真剣に考えていこう、というのが、「稲盛和夫の実学」の最も基本的な考え方なのです。
是非、経営者は、会計に対してもこのくらいの真剣な気持ちで取り組んで欲しいものです。
編集後記
この週末は、京都に行ったり、ドンボ帰りでセミナーをしたり、受けたり忙しい週末でした。気がつけば明日から12月ですね...それにしても早いものです。
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