実践!社長の財務
自己資本比率1本に絞る【実践!社長の財務】第369号
2010.11.29
皆様、おはようございます。
税理士の北岡修一です。
約5年前になりますが、ココまでできる「儲かる会計」(出版:日本能率協会マネジメントセンター)という本を出しました。
この本を読んで、岡山の方から来てくれた方がいます。
自分のやってきたことが、この本に書いてあると、感激してわざわざ来てくれました。
そこで、会社を立て直すために、どんなことをやってきたのか、話してくれました。
もうすぐ5年近くも経つので、うろ覚えなところもありますが、私もそのことが非常に嬉しかったので、とても印象に残っています。
今日は、その方の話を書いてみます。
(以前にも書きましたが、もうずい分経っていますので
もう一度書きます)
自己資本比率1本に絞る
その方は、M工業のM社長といいます。
M社長は、二代目です。
M社長が、会社を引き継いだ時は、自己資本比率が8%だったといいます。
自己資本比率とは、総資本(貸借対照表の一番下、合計額)に占める自己資本(純資産の部)の割合をいいます。
自己資本比率が、8%ということは、総資本のうち、92%は負債ということであり、相当財務内容が悪い、ということです。
案の定、M社長の毎日は、資金繰りに走り回る、ということが大半を占めていました。
銀行であったり、取引先であったり、1日中資金繰りに駆け回ったとのこと。
まるで、それが経営者のすべての仕事であるかのように...。
経営がわからなかったM社長は、ある時経営者セミナーに行ったそうです。
そこで、講師が言ったことは、「会社の指標で最も重要なのは自己資本比率である。これさえ追求して上げて行けば、経営は必ず良くなる。」ということでした。
M社長は、とても素直な方ですから(私が会った印象です)、これを信じ、「今後は、当社の経営指標は、自己資本比率を高めること、これ1本で行こう!」という決断をしました。
それからというもの、自己資本比率をいかに高めるか、ばかりを考え、行動してきました。
自己資本比率 = 自己資本(純資産)÷ 総資本
ですから、これを高めるには、まず自己資本を増やすこと。
そのためには、資本金を増やすか(増資)、内部留保(利益)を増やすかです。
資本金を増やすのは、中小企業ですからあまりできません。利益を増やさなければなりません。
徹底的なコスト削減、利益構造の変革、新規の取引先を増やす、などありとあらゆることをやってきました。
そして、私がとても感動したのは、次のことです。
自己資本に繰り入れる利益というのは、言うまでもなく、会社の最終利益です。最終利益ということは、税引後の利益である、ということです。
すなわち、利益を出して、税金を払った後の利益が、自己資本に組み入れられるのです。
そこで、M社長は、たくさん税金を払おうと思いました。
利益をたくさん出して、税金を払う、ということです。
しかし、先代からの顧問税理士は、利益が少しでも出ると節税を提案してきたり、不要な保険を勧めてきたりします。
(そんなことが、実は自己資本比率が低かった原因かも知れませんね。専門家は反省すべきです...)
税理士のしつこい節税提案に業を煮やしたM社長は、何とその顧問税理士を、切ってしまったのです!
自己資本比率を上げるもう1つの方法は、分母である総資本を減らす、ということです。(分母が少なくなると、当然、比率は上がりますよね)
M社長は、そちらの方もどんどん手がけていきました。
総資本を減らす、ということは、資産を減らして、負債も減らす、ということです。
すなわち、不要な資産を売却して、その資金で負債を返済していく、ということです。
M社長は、徹底的に資産を見直し、先代からの資産をどんどん処分していきました。そして、負債をどんどん返していきました。
そのような結果、自己資本比率はどんどん上がってきたのですが、銀行が合格点という30%を超えても、ちっとも資金繰りは良くなりませんでした。
50%を超える頃から、何か少し楽になってきたな、と感じたそうです。
そして、自己資本比率が60%を超えたら、かなり楽になった、もう資金繰りのことは心配することがなくなったということです。
この比率が何%がいいかなんて、机上の理論ではいろいろ言えますが、M社長のように実体験してみないと、本当はわからないのでしょうね。
私がセミナーで、いつも「自己資本比率は、60%を目指しましょう。」と言っていますが、それはM社長の実体験をお聞きして、言っているのです。
自己資本比率を高める、ということの中に、経営の重要なものが、すべて入っていると思います。
是非、皆様も、自己資本比率を高めることを1つの目標にして、経営をしてみてはいかがでしょうか。
編集後記
なかなか、この実例に基づく新しいシリーズ、私も気に入っています。まだまだ、いろいろありますので楽しみにしてください。悪い例なんかもあげた方が、いいかと思うのでそのうち書きます。
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