実践!社長の財務
持てる資産をフル活用して売上を上げ、その売上を最小のコストで実現する【実践!社長の財務】第825号
2019.08.26
中小企業が成長発展していくためには、持っている資産を、フル活用していく必要があります。
設立時から多くの資本金を出せるわけでもなく、また、集められるわけでもない、というのが多くの中小企業です。
銀行からの借入れも、設立時には多くは望めないでしょう。
資本金1千万円であれば、その1千万円を使って、最低限の設備や立上げ資金を使い、あとは様々な創意工夫によって、お金を回していきます。
経営者の皆様は、創業時を考えていただければ、それこそ必死の思いで、様々な工夫を行って、事業を拡大してきたのではないでしょうか?
販売代金をいかに早く支払ってもらうか、前金でもらうことはできないか。
仕入資金は、販売代金を回収した後に払えるように交渉したり、広告費販促費などは、継続取引を前提に長期の分割払い、出世払いにしてもらったり…。
設備に関しては中古を購入したり、安くあるいはほとんどタダ同然で貸してもらったり、割賦払いにしてもらったり。
それこそ、様々な工夫をして、少ない資金で事業を立ち上げて何とかやっていけるようになってきたのではないでしょうか。
そのような創意工夫が、今日のタイトルの前半部分、”持てる資産をフル活用して売上を上げ”です。
これは中小企業にとって、非常に重要なことです。創業時だけでなく、いつの時点であっても、この精神を貫いていかなければなりません。
これは、経営分析用語で言えば、総資産回転率です。
計算式は、売上高/総資産 です。
持てる資産(総資産)を使って、どれだけの売上を上げることができたか、という比率です。
総資産とは、貸借対照表の一番下の数字です。
当然、この数字は高ければ高いほどいいです。
最低年1回転はして欲しいですね。すなわち、年間売上は最低総資産以上、ということです。
そして、中小企業にとってもう1つ大事なのが、その売上を上げるためのコストを、いかに最小限に抑えられるか、ということです。
これも創業経営者にとっては血の滲むような思いで、必死に創意工夫されてきたのではないでしょうか?
同じ品質のものをいかに安く仕入れられるか、作れるか、いかに少ない人数で事業を回していくことができるか。
家賃から、交通費から、消耗品の類まで、どれだけ少ない出費で会社を回していくことができるか、創業当初は創意工夫というか、ケチケチ精神でやってきたのではないでしょうか。
このように何とか利益を絞り出して、今の会社の土台を作ってきたのが、今日のタイトルの後半部分、”その売上を最小のコストで実現する” です。
これも前半部分と合わせ、これからも企業が生き残っていくために、強く思いつづけておかなければいけないことです。
こちらの方を経営分析用語で言えば、経常利益率です。
計算式は言うまでもなく、経常利益/売上高 です。
経常利益率は、このメルマガで何度も書いているように10%を目指して欲しいですね。
さて、中小企業が経営していくにあたって重要な上記2つの比率、総資産回転率と経常利益率を掛け合わせると、どのような比率になるでしょうか?
計算式で言えば、
売上高/総資産 × 経常利益/売上高 です。
両方ともに売上高があり、分子分母ですので、消されます。すると残るのは、次の算式となります。
経常利益/総資産
これは何という指標でしょうか?
そうです、そのまま 総資産経常利益率 いわゆるROAですね。
ROA、すなわち、総資産を使ってどれだけの経常利益を計上することができたか、会社を効率よく経営できたかを表す総合的な指標です。
今日のタイトルにある中小企業の経営にとって2つの重要なことを最終的に判定する指標です。
総資産回転率は最低1回転、経常利益率は10%と言いましたので、掛け合わせればROAは10%以上欲しい、ということになります。
もし、経常利益が10%を出すのが難しい業界で、たとえば5%しか出せないとしたら、総資産回転率を2回転できるようにしてください。
総資産をフル活用して2回転させるのです。ムダな投資などはカットします。
そうすれば、ROAは10%となります。
ROAは、2つの指標の組み合わせにより、どの業界でも10%以上を目標とすることが可能となります。
御社の場合はどのような組み合わせになるでしょうか?
編集後記
8月も最終週ですね。昨今は交代で夏休みを取る会社が多いため、何となくいつもの月よりものんびりした雰囲気がありますね。ただ、もうそろそろ9月ですので、学校時代同様に少し気分を引き締めて、新たな学期に向かっていかなければいけないですね。宿題も終わらせて...
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