実践!社長の財務
約束手形を5年間で廃止していく【実践!社長の財務】第908号
2021.03.29
「約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会」というものがあります。
これは、政府が中小企業の支払手段の適正化をテーマに掲げ、約束手形の現金払化等に取り組んでいるものです。
その検討会の報告書が、本年2月に発表されました。
それによると、産業界全体で5年間の自主行動計画を作って、約束手形の利用を廃止していく、という方針が示されています。
手形を使用するのは、製造業や建設業、卸売業など特定の業界に多く、業界全体で手形が活用されているため、これを廃止していくためには、全体で取り組んでいく必要があることが、強調されています。
約束手形(通常の手形のこと)の現状は、1990年度をピーク(約107兆円)に、最近では25兆円まで減少してきています。
ただ、2007年度以降は下げ止まってきており、近年は若干上昇傾向にあるとのことです。
令和2年度アンケートによると、現金振込のサイトが約50日であるのに対し、約束手形は約100日と、現金取引と比べて約2倍の長さとなっています。
さらに、現金の支払期日に約束手形が振り出される取引も多いため、その場合は3倍の長さ(約150日)にもなります。
同検討会では、「企業間取引の国境がなくなった今日において、我が国のビジネス環境の魅力を高めていくという観点からも、取引先企業に対して資金繰りの負担をさせる取引慣行は、見直されるべき」としています。
正に、そのとおり、と思いますね。
支払い期間が長いだけでなく、現金化するための割引料を、受取人側が負担するのも問題、と検討会は指摘しています。
割引料は、金銭が支払われるまでの期間に対する利息としての性格を有していること等に鑑みれば、割引料は期限の利益を享受する振出人が負担すべきものと考えられる、ということです。
確かに利益を享受しているのは、手形を出す側ですよね。
支払いを待ってもらっているのだから、その分の利息は待ってもらっている方が払う...。
当たり前のことが、なぜか手形取引では、反対になっている。これは力関係によるものなのでしょうかね。
手形は減ってきているのはわかっていましたが、下げ止まっている、むしろ若干上昇してきている、のは知りませんでした。
手形は紙ベースで、アナログ的にやり取りするものですから、様々なリスクが伴うこと、コストがかかること、さらには、電子商取引には向かないこと、などから、いずれにしても廃止すべきと、私も思います。
すぐにできないのであれば、せめて電子記録債権などを活用するようにしていく、環境を整えていくことが必要でしょう。
手形を発行している会社は、今後は上記のような動きが国をあげて、産業界全体で活発になってくると思いますから、今から考えていく、取り組んでいくことが重要かと思います。
編集後記
いよいよ3月最終週、今週の後半からは4月です。
4月は何となく、ウキウキする季節ですね。コロナ禍は続きますが、4月からは、こう変えていこう、新しいものにチャレンジしていこう、という気になるものです。
是非、そのようにしていきましょう!
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